人生を仕舞う

人生をどう仕舞っていくか。遺せるものはあるか。

デパート買収

 子どものころ、両親によく連れて行ってもらったデパートが買収され、家電量販店が入ると聞いた。

 そのデパートに出かける時は、少し御粧して電車に乗ってワクワクして出かけた。

 住んでいる町にあるそれとはまったく違い、煌びやかで上等なものが並んでいた。

 遊園地に連れて行ってもらうより、デパートに連れて行ってもらうほうが嬉しく、両親もそのことをわかっていたようで、よく連れて行ってもらった。いろいろ見て回るのも楽しく、ちょっとおしゃれな服を買ってもらうのもうれしかった。

 お昼ご飯は上層階にある食事処で食べさせてくれた。いつもうなぎか釜めしを食べた。

 

 最近そのデパートに行く機会がなく、暫くぶりに出かけてみた。

 これが多分最後になると思い、隅々まで見てきた。

 子供服売り場はお店こそ変わったがレイアウトは昔のまま、少し身長が伸びて子供服では小さくなってきたときから買ってもらっていた服の売り場はそのままだった。

 ”ねぇお父さん””ねぇお母さん”と言ってしまいそうになった。

 上層階の食事処に行ってみた。お店は殆ど変わってしまい「立田野」と言う釜めし屋さんはなかった。ところが、うなぎ屋さんは、昔のままの場所でやっていた。席の感じも当時のままだった。食べていこうと思ったが、今の自分には1食5900円のうなぎは食べることができまかった。

 いろいろ回ってみて、両親がどれだけ私のためを思ってしてくれたのか、感謝でいっぱいになった。

いろいろ思いだしたら涙が流れた。マスクがあってよかった。

 

 両親は他界した、お墓にどんな立派な服をかけても、それを着てもらうことはできない。

 

親孝行はできていただろうか。

親は本当にありがたい。