人生を仕舞う

人生をどう仕舞っていくか。遺せるものはあるか。

最後の桜

 あと2か月ほどで、生まれてからずっと住んでいる此処を離れる。

 この街では、身寄りのない者が最後を迎えることは、福祉的な面でかなり厳しい。人生を仕舞うことはここではできない。

 離れることに特に感情はないと思っていたが、近くを流れる川の両岸に植えられている桜を見たくなった。

 小さい頃は、両親と桜が咲き始めてから花吹雪になるまで毎日のように手をつないでもらって散歩した記憶が甦ってきた。

 あの頃が一番幸せだったと思う。

 もう、この桜は見られないのかぁ と思うと寂しくなった。